燕が帰った日
- Kazeyoshi Uno
- 2022年4月9日
- 読了時間: 2分
2022年4月9日の土曜日。
晴れ晴れとした青空の下、鳥のさえずりが聴こえていた。
着替えながら2階の窓から外を眺めていると、燕の素早い影が庭を横切った気がして、窓を開けて空を見あげた。
少し霞んではいるけど、もうまるで夏のような青空。
確かに燕が飛んでいる。
街へ降りるともう汗ばむほどで、交差点で何気なく信号待ちをしていると、やっぱり建物のああちこちに燕が帰って来ていた。
どうやら今朝、第一連隊はこの長野の地に戻ってきたようだ。
昼頃に、たまたま空を見上げていると、
燕の連隊が北の方へ飛んでいくところに出くわして感動してしまった。
どこまで行って、どこから帰ってきたのか。
旅の間にどんなことがあったのか、
あんな小さな体で、命の限り目一杯に生きている。
まるで、いや、心の中ではすでに旅をする家族の一員だと思っているから、
帰って来ると、なんだか涙が込み上げて来る。
去年は
我家の巣にたどり着いて、疲れたように動かずに息絶えてしまった子もいた。
そして結局、我家の軒先はそのままずっと空き家だった。夏には九州へ引越しをするつもりでいたからその方が都合がよかった訳だけれど。
とにかく
僕はそんな燕を、同じ星に棲む生き物同士として、とても尊敬している。
彼らの生きている様を見ると、
グズグズ言ってる自分が恥ずかしくなる。
ダラダラ生きている自分が愚かしく思えてくる。
他にもそんな、潔くも気高い命など、探せば当たり前に存在している奇蹟なのだけれど、僕は自分でもよく分からないほどに、どうしようもなく燕に憧れている。
おかえり。
みんな、逞しくて美しい。
おかえり。
帰って来てくれてとてもうれしいよ、
ありがとう。
他に言葉なんて
何もない。
燕が帰って来て、
山の桜が田植えを囃したて、
林檎の花が咲いたらいよいよ、
長野の短い夏がはじまる。
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